Coinstarのキオスクで現金と引き換えにビットコインを買う
アメリカで、スーパーの小銭カウンテイング・キオスクを全国Coinstarが今年Coinmeという暗号通貨ベンチャーと提携、Coinstarでビットコインが買えるようになった。1月から試用が始まり、5月には21州2200箇所でビットコインが購入できるようになったとのこと。
なので、試しに100ドル分買ってみた。
しかしキャッシュでしか買えないので、まず銀行に行って100ドルおろす。(普段はキャッシュレスな生活をしている)。
(余談ながら、なぜ「小銭カウンテイング機」などというものがあるかというと、アメリカの銀行は小銭を数えてくれないのである。ATMに小銭を入金できないのは無論のこと、袋いっぱいの小銭をカウンターに持っていくと「自分で数えてから出直してこい」と言われる。自己申告の数字に間違いがあれば、勝手にあとで入金額が訂正される。)
画面でまず「Buy Bitcoin」を選ぶ。左下のEspanolを選ぶとスペイン語になる。(カリフォルニアでは人口の3割が家ではスペイン語。)
「購入は2500ドルまで、取引手数料は4%」など色々と注意事項が表示される。それによれば、ビットコインはここでは入金できるだけで、使うには別途オンラインでcoinmeの口座を開かなければならない。暗号通貨取引口座開設時は本人確認(KYC)が必要なので、それをどうするのかと思ったが、こういう仕掛けなのか。以上諸々をAccept。
次の画面で電話番号を入力。後ほどCoinmeの口座とこの番号がリンクするとのこと。
そこで紙幣を入れろ、という指示が出た。しかし驚いたのは右上のビットコイン価格。$11,123.17と表示されている。直前にCoinbaseで確認した時は1万ドルを切っていたはず、とCoinMarketCapをみると、$10,523.86となっている。6%近く高い。4%の手数料に6%のスプレッドで実質手数料10%である。
まぁしかし、乱高下するビットコイン市場においては10%くらい誤差のうち、学習代と思って購入。
ここで、バウチャーがプリントアウトされて出てくる。そこには、後ほどCoinme口座に買ったビットコインを入金するために必要なコードとパスワードが印刷されている。
Voucher may fade.と但し書きがあるが、みるからに消えそうな印字である。Coinme口座開設を先延ばししている間にバウチャーのプリントが薄れてしまってそれっきりになるケースもありそう。
ということで、すぐさまCoinme口座開設へ。サイトで基本情報を入力し、運転免許証の裏表の画像を提出、さらにラップトップのカメラで写真を撮って、5分ほどでKYC終了。KYCに丸一日かかる取引所も多い中、なかなかこのプロセスはよくできている。運転免許証の写真とカメラの写真が同一なことを画像認識で確認しているのだろう。
また、ありがちな「登録した電話番号にショートメッセージで確認コードが送られる」というステップもなかった。確認しなくとも電話番号だけで本人確認ができるサービスもあるのでそういうところを使っているのか。
(勘ぐると、全然KYCしていない、または後になって人海戦術でやっている、という可能性もなくはないのだが。)
価格の上乗せ分が大きい
というわけで、Coinstarでのビットコイン購入にはほぼ10%の手数料を取られることがわかった。
(上記の取引後15分ほど経ってもう一度BTC価格が表示されるところまで行ってみたが、その時点でもやはり6%弱の価格上乗せがあった。)
ちなみに去年からアメリカではビットコイン(や他の主要な暗号通貨)が簡単に買えるところが増えている。例えばSquareのcashアプリ。P2Pペイメントで飲み会の清算などに使うのがアプリの主な使い道だが、さらにビットコインの売買もできるようになった。SquareのFAQによれば、スプレッドは購入価格によって決まるとのことなので、$100で売り注文をするとこんな表示。
1 BTC = $10,871.87となっているが、この時点でのCoinMarketCapのレートは$10,749.66だったので、だいたい1%プラス。これ以外の手数料はない。
また、モバイル株式取引アプリのRobinhoodでもビットコインが買える。こちらはリアルタイムで相場が刻々と変わるので、Coinbase Proと比較したが、ほぼ同じ価格であった。Robinhoodも手数料なしである。
やはりCoinstarの手数料は高い。
なお、そのCoinstarのキオスクが並んでいるSafewayスーパーの一角はこんな感じだ。
左側のredboxはフィジカルメディアのDVDで映画を借りられるサービス。Netflix、Amazon Prime Video、Huluなど、ストリーミングでなんでもみられる時代にDVDレンタル。
そして右側の7と書いてあるのは宝くじ販売機。米国では貧困層ほど宝くじを買う傾向があり、年収1万ドル以下の人の平均宝くじ購入額は年間597ドルもあるという驚愕の統計もある。この二つに挟まれている時点で、coinstarからはほのかに、貧困層を搾取する「合法ウシジマくんビジネス」の香りがする。( 合法ウシジマくんビジネスについてはリンク先を参照 )
そして、10%手数料のCoinstarキオスクでビットコインを買うのはどんな人かと考えるに、
1)金融知識が低い
2)銀行口座がない
3)知識も口座もあるが、そこまでしてビットコインを買いたくはない。しかしキャッシュで今すぐ買えるなら少し試してみようかな
のどれかだろう。3)の人は、本格的にビットコインを買うならもっとレートの良い他の買い方に移行するはず。
ということで、これはやはり1)と2)を対象とする「弱者を搾取するビジネス」な気が非常にするのであった。