暗号通貨勉強会:Genesis倒産か?

業界最大の機関投資家向けレンディングを行ってきたGenesisの倒産が危ぶまれている

暗号通貨勉強会:Genesis倒産か?
Photo by Pablo Martinez / Unsplash
Photo by Pablo Martinez on Unsplash

■概要

  • 業界最大の機関投資家向けレンディングを行ってきたGenesisの倒産が危ぶまれている
  • Genesisは最も多かった時で$50Bのローンを貸し出していた
  • $1B分のFTT(FTXのトークン)を担保として受け取っていた
  • GenesisはThree Arrows Capital(3AC)にも$2.3 billionを貸していて、これが焦げ付いていた(Genesisの全ローンの47%)
  • 11月16日にGenesisが引き出し停止

■問題の背景

  • GenesisはDigital Currency Group(DCG)の子会社で、OTCで取引されているビットコインのトラスト・ファンド、Grayscale も持っている(メディアのCoindeskもDCG子会社)
  • Grayscaleはビットコインのトラストファンド(GBTC)を運用しており、現在$10B相当。これはGrayscaleがビットコインを所有、それを細分化して株として公開市場で買えるようにしているもの。Grayscaleは2.5%の手数料を受け取っていた
  • Grayscaleのビットコインのうち635,000 BTC、約$11B分はCoinbase Custodyに預けられている
  • GBTCは元々持っているビットコインの額よりトラストファンドの総額の方が高いというプレミアムがついていたが、2021年2月にこれがディスカウントに転じた
GBTCのプレミアム・ディスカウント
  • プレミアムが続いていた時点では、「GenesisからBTCを借りて、GrayscaleからGBTC株を買い半年のロックアップ後に売却、BTCを返済するとプレミアム分だけ利益が出る」というアービトラージがあったが、ディスカウントに転じた時点でそのポジションが損失となった。ディスカウント化の理由はカナダのビットコインETFなどより安価にBTCエクスポージャーを買える代替品が出たからと言われている。さらに信用不安が加わり現時点でのディスカウントは約50%

■Three Arrows Capitalとの関係

  • 2021年3月時点で3 Arrows Capital(3AC)がGBTCの6.1%を所有。当時のGBTC総額が約$30Bだったので、$1.8Bに相当する
  • さらに、3ACはLuna Foundation Guard(LFG)がリザーブ強化のためにビットコインを$1.5B分買った際にそのうち$500Mは3ACから買っていて、その対価の $200M分はTerraのステーブルトークン、USTで支払っていた。(その後USTはほぼ無価値になったので、3ACは$200M分の損失が出た)

■負の波及効果

  • 親会社のDCGがGenesisから$1.1Bを借りてGenesisを増資しており、Genesisの最大のアセットはこのローン。Genesisが倒産するとDCGも倒産を余儀なくされる可能性があり、そうするとGrayscaleはどうなるのかという不安が広がっている
  • リテール向けの利子付き口座の多くがGenesisに預けて運用されており、Gemini Earnも$900MをGenesisで運用していたが、Genesisが引き出し停止した11月16日に同じく引き出し停止

業界相関図はこのようになっており、同じ資金が回っていただけ

■その他のニュース

  • Cathie WoodのArk InvestはFTX倒産以降GBTCを45万株買っている(現時点で約360万ドル相当)
  • Coinbaseが顧客にUSDTからUSDCに乗り換えるよう要請(手数料無料の特典付き)
  • Crypto.comがProof of Reservesを公開
  • SushiSwapを作って姿を消したChef NomiはSBFでは?
  • USTがペグを失うきっかけとなったUST売り注文を出したのはSBFでは?
  • SBFはメディアインタビューを次々におこなっているが、その一つで「顧客がBTCを買った時FTXはBTCを買っていなかった。帳簿上の数字が動くだけ」と発言。またFTXに顧客が預け入れたUSD$10Bのうち$5B以上はAlameda Researchの口座に入っており、そのままAlameda が運用していた

Read more

ブロックチェーン技術(初級編Ⅱ)

ブロックチェーン技術(初級編Ⅱ)

1.ブロックチェーン業界の現状 現在2021年時点で、Ethererumが爆発的に認知度が高まり、同時にNFTブームを巻き起こしています。日々ニュースやSNSでNFTやDeFiについて、目にしない日はありません。コロナ禍における新たな経済圏としても注目を集めています。そんなブロックチェーンの業界の現状についてみていきましょう。 [決済特化系(目的特化系)について] 基軸通貨としてはBitcoinが1強状態である。理解が進み、Bitcoinが主要な金融人からもその価値を認められつつある。主要なヘッジファンドや年金基金がドルインフレヘッジ手段として投資を開始し、価格が高騰。目的用途以外に利用できない。 [ブロックチェーン インフラ系について] Ethereumがほぼ1強状態である。DeFi(分散金融)が2020年は非常に盛り上がり、2021年にはNFTが爆発的な人気に。インターネットとWebと親和性が特に高く、分散型取引所やゲーム内通貨を想定したマーケットプレースなどの実装も進む。ただし、速度問題が重くのしかかり、手数料も高騰。ゆえにEnterpriseの実装も進まない。 [専用シ

By G.U.Staff
ブロックチェーン技術(初級編I)

ブロックチェーン技術(初級編I)

1.ブロックチェーンとは? ブロックチェーン(Blockchain)とは、暗号技術を使ってリンクされたブロックと呼ばれるレコードの増大するリストである。各ブロックには、前のブロックの暗号化ハッシュ 、タイムスタンプ、トランザクションデータ(一般的にはマークルツリーで表される)が含まれている。(Wikipediaより) 簡単に言えば、信頼できない人が多少紛れ込んでいても、 改ざんすることが難しい、分散共有データベースです。ブロックチェーンを利用すると、今までコストや組織間調整の負荷のために難しかったデータやビジネスロジックの共有が、より安価に、かつ簡単にできるようになります。 近年のウェブとインターネットの飛躍的な発展における情報革命によって、人々のコミュニケーション能力、情報収集能力は有史以来飛躍的に向上しました。 しかしながら、インターネットの機能はまだまだ不完全であり、特に認証、決済、信頼担保等の点において大きな技術的欠陥を抱え、フェイクニュースや詐欺などが横行しています。 そのような中、2007年にSatoshi Nakamotoが発明したとされるBitcoinが登場し、

By G.U.Staff
暗号通貨勉強会:最近の各種ハックなど

暗号通貨勉強会:最近の各種ハックなど

* 20歳のシンガポール人のLamがアメリカ人から$230M相当のビットコインを騙し取り逮捕された。Googleを装い「アカウントがハックされた」と電話して被害者にセキュリティコードを提供させ、GmailとOneDriveで暗号通貨の情報を探しGeminiの口座があることを発見。Geminiのセキュリティチームのふりをして口座がハックされたと電話、被害者に$3Mを送らせる。さらにリモートデスクトップソフトウェアをダウンロードさせ、4100BTCがあるアドレスのプライベートキーを表示させてBTCを騙し取った。共犯者がVPNを使わずにTradeOgreのアカウントを作ったことから住居が判明、そこから足がついた。Lamは31台の高級車を購入、家賃が月々$68,000するような高級住宅を複数賃貸、さらにナイトクラブで一晩に$500,000使うなどしていた * テレビのドキュメンタリー、Money Electric:The Bitcoin Mysteryで、ビットコイン初期開発者のカナダ人Peter Toddがサトシナカモトである、とし、Peter Toddはこれを強く否定するが、殺人・誘拐

By Chika Watanabe