暗号通貨勉強会:ブロックチェーンにデータを提供するオラクルについて
2021年8月29日にClubhouseの暗号通貨勉強会で話し合った内容です。Clubhouseの録音は上記ポッドキャストよりどうぞ。
オラクルとは
もともとoracleは「神託」という意味で、暗号通貨界でオラクルというとオフチェーンの世界のデータを集めてオンチェーンのスマートコントラクトにその情報をフィードするもののこと。ここでフィードされる情報には、価格、支払い完了、気温、選挙結果など様々なものがある。
オラクルの種類
- ソフトウェア・オラクル
最も一般的なもので、ソフトウェアは例えばデータベース・サーバ・ウェブサイトなどのオンラインデータソース。為替レート、暗号通貨価格、フライト情報など既にデータがあるものが対象になる。
- ハードウェア・オラクル
センサーやバーコードスキャナー、RFIDタグリーダー、ロボットなど。例えば積載トラックが目的地に到着した、などの情報をオンチェーンにフィードする。
- 人間・オラクル
特定の知識を持ち、情報の正しさを精査することができ、暗号的に本人であることを証明できる人。機械が回答しにくい抽象的な問いかけの答えを出すことができる。
上記3種類以外のカテゴリとしては下記が考えられる。
- コンピュテーション・オラクル
インプットに基づいた計算を行ってその結果をオンチェーンに返す。オンチェーンで計算すると採算が取れない場合の利用が想定される。
- 中央集権型 vs 分散型・オラクル
中央集権型は真のデータを提供するオラクルが一つだけあるもの。中間者攻撃を受けるリスク、オラクル自身がデータ改竄するリスクがある。
一方分散型は同一データに関して複数のソースがあるもの。複数データソースをクエリしてあらかじめ定められた方法で真のデータを決定する。例えば平均から大きく外れるデータを除外して平均値を取るなど。
Chainlink
オラクルといえばChainlink。2014年創業、2017年にICOで$32 millionを調達して製品をローンチ。LINKというERC-20の独自トークンを持つ分散型オラクルネットワークの草分けである。Chainlink自身は独自ブロックチェーンは持たず、自らデータ提供することもない。その代わりにデータプロバイダのマーケットプレース兼ミドルウェア的な役割を持つ。データを提供したいプロバイダがChainlinkのネットワークに参加、データが欲しい機関は多数のソースからのフィードをChainlink経由で得ることができる。その際の支払いはLINKトークンで行われる。
Synthetix、Aave、yEarnといったDeFiプロトコルがChainlinkのオラクルを利用している。
- Chainlinkの仕組み
- オラクル選択:ユーザはデータ要求事項を記載したSLAを作成、Chainlinkが適切なデータプロバイダの候補を出し、それに基づいて最終版のSLAを決定し、LINKをデポジッドし、データプロバイダからのビッドを受ける
- データ・レポーティング:データプロバイダは、Chainlink上のSLAで定められたデータをオフチェーンから取得しChainlink上のコントラクトに送付
- 結果アグリゲーション:Chainlinkのアグリゲーションコントラクトが、複数のデータプロバイダからのデータを一本化、バリデーションした上で傾斜配分するなどして得られた結果をオラクルとしてユーザにフィードする
- 支払い:LINKがデータプロバイダに支払われる
- Chainlinkの特徴
参加するデータプロバイダのレピュテーション投票システムがあり、さらにプロバイダ側が自らのコミットメントを示すためにLINKをステーキングする
- Chainlinkに参加しているオラクル
現在データプロバイダは43あって、うち20個がEthereum、11個がBinance、11個がMatic、1個がxDAI上にある。ファイナンス以外でのデータプロバイダとしてはこんなものがある。
LuxFi:リアルワールドのラグジュアリーグッズのデジタルツインをNFTとして自社運用のレイヤー2チェーン上に発行。Ethereum mainnet、Ethereum Kovan Testnet、Polygon Mainnetにリンク
SportMonks: スポーツデータ。サッカー、F1、クリケットをカバー。ライブスコア、選手データ、チームデータ、スポーツ賭博マーケット情報などを総計1200リーグについてフィード。Ethereum mainnet, Binance Smart Chain Mainnet, Ethereum Kovan Testnetにリンク